1年前の4月19日、五島記念文化賞・美術部門新人賞を受賞した木坂美生さんの新人賞贈呈式でした。
「この方は非常に奇妙な方でして…」「アカデミックな美術教育を受けていない彼女の実にそっけない作品が…」
褒められてないようなつかみから始まり「つくりごとの多い時代にスカッとした空気を吸った作品で、満場一致で決まりました。運命の、美術のミューズが彼女に微笑みました」で締められた酒井忠康さんのスピーチが昨日のことのように思い出されます。
2014年に開催した初個展にして唯一の個展(ちょうどこの時期でした)は、まさにミューズの煌めきで、密かに美術関係者を魅了しました。
東京都美術館の山村仁志さんのテキストを一部抜粋し紹介させてください。
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彼女の写真には一種古典的な調和と荘厳さがあり、日常の事物、人物、情景、風景が、「悲劇的」とでもいうべき気品を帯びていたことだった。構図や色彩が完璧なのである。
〜 中略 〜
まるで時間が止まったかのような、一切が凍りついたような、孤独で、人間的で、悲劇的な空間がそこにある。そこには現代社会の矛盾が静かに刻印されており、深い感情が秘められている。
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未就学児を含む4人のお子様とご主人の6人での海外研修を終えて、新作も成果発表展も期待される木坂さんの初個展にて作品をお求めくださったYさんにインタビューいたしました。
木坂美生 Mio Kisaca
2014年4月28日~5月4日 より
「Light Shade」
◯ご購入いただいた動機
好きな作家だから。初個展でもあったので、コレクションとして、また応援したい気持ちで購入しました。
◯作品を購入することに抵抗はありませんか
自然なことです。
◯作品を飾ることで生活に変化はありますか
作家のことを思いだしたり、作品の存在が家(家族)の記憶の一部になっていくような気がします。
◯美術館やギャラリーには、よく行かれますか(頻度など)
数えたことがなくてわかりません。(Y様は、よく行かれる方ですよ:はらだ)
◯他にもコレクションしていらっしゃいますか
コレクションしているものの一部を飾っています。きっと折に触れてコレクションしていくと思います。
又、自分がいなくなっても、家族や友人に渡していきたいと思っています。
◯作品の購入や作品を飾ることを誰かに勧めたいですか
どうでしょう。出会いだから。
◯ギャラリーへ望むこと
奥野ビルのあの空間は得難いものです。今も残るかつての生活の記憶とアーティストとの出会い、
原田さんのパッションで、これからも紡いでいってほしいです。
木坂美生 →
略歴
2003 東京国際大学国際関係学部国際関係学科 養護学校教員課程 卒業(障害児教育)
2019 「第30回 五島記念文化賞美術新人賞」受賞
個展
2014 「キサカミオ展」 Gallery Camellia(銀座)
グループ展
2018 「face to face #15 【 Kontrapunkt ~ 夜の主題による 】」 Gallery Camellia(銀座)
2017 「白群」 Gallery Camellia(銀座)
2012 「KIMCOLLE Vol.1」 LOOP HOLE(府中)
2007 「芸術からインテリアへ」 MOTT gallery(新宿)
2004 「GEISAIミュージアム」 六本木ヒルズ 森タワー24階 特設会場(東京)
2003 「GEISAI#6」 東京ビッグサイト 東4ホール(東京)
宣材撮影
2014 「日本エレキテル連合」「ウエストランド」TITAN
雑誌
2006 「TEN」IDG JAPAN
ラジオ番組
2004 「NEC ON THE ROAD AGAIN-101のタカラもの」TOKYO FM
4人のお子様のうち2人が難病という、子育ての最中でもあり、2014年以降の発表は数点でした。写真を撮ることは続けていて、定期的にみせてもらったその作品は、いつも、とても強く印象に残るものでした。晴天であっても慎ましやかな陰りを帯びたトーンで、乾いた被写体が鑑賞者の感情には湿度を感じさせます。ある種の違和感が心に飛び込み、響いてしまうのでしょうか。現実味のない無機質で絵画的な構図には隠された人の営みも感じるのです。