昭和の日と名前がかわって早くも数年が過ぎても、みどりの日と言ってしまいそうな気持のよいお天気だった昨日、4月29日に早川陽子さんよりメッセージが届きました。こちらのオンライン展覧会へのお返事です。(早川展・作品紹介ページ →)
月末作業もあり銀座に行き、帰るころメッセージを受け取り、ふと、ギャラリーの入る昭和7年建築の奥野ビルを見上げました。関東大震災からの復興を遂げ豊かで平穏な銀座に暮らすも束の間、ほどなく戦争に突入した頃、このビルの住人達はどんな想いでいたのでしょうか。歴史を紐解けば、"未曽有の"と形容される凄惨な出来事は何度もあり、その都度、暮らしぶりの変化に対応しながらの今があります。歴史が動くときをこの目でみながら、はてしない物語のどこか一行に一度きりの私達の人生があるのでしょう。そんなことを感じた早川さんからのお便り、今日も番外編となりますが、早川作品から伝わる光の理由が解るようで、皆様へも。
(お客様より頂戴しておりますお便り、お写真、インタビュー内容は、偏りの無いように少しずつご紹介して参ります。楽しみにお待ちいただけたらと思います。)
こんにちは。
お久しぶりです。
作品をそばに置いてくださり、
こうして写真やお便りまで寄せていただいて、
作り手として幸せな気持ちでいっぱいです。
ありがとうございます。
Nさまのお手元の作品のことは、
よく思い出します。
ガブリエルの横顔や色彩豊かな羽を、
点描で表すことがとても難しく、
いつも以上に慎重に、
且つ、息を止めて一気に描き進めたこと。
そして開閉式の額。
蝶番を自分で取り付けたものの、
なかなかまっすぐについてくれず、
一番手こずってしまったこと。
などなど…。
額の開閉の際にガタつきや歪みは生じていませんか?
もし、気になることがありましたら、
いつでも直します。
お知らせくださいね。
このような状況の中、
日頃はどのように過ごしていらっしゃいますか?
私の方は、
かつて古典絵画の模写に心を慰められたように、
今は道端の草花に心惹かれています。
毎日散歩をして目にしているからでしょうか。
春ですから、
名もない草にも小さな花がついて、
なんとも愛おしいその姿を分厚い本に挟んでは、
また開く時を楽しみにしています。
押し花ですね。
先日も、
我が家にある数少ない分厚い本に、
摘んできた花を挟みました。
その本は、
ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』。
その題名を見た時にふと思ったのです。
閉じ込めた小さな花はこの身であり、
私たちのいまいる場所は、
未知のウイルスとの共存に向けた、
はてしない物語の1ページ。
いや、
1行ぐらいにしか過ぎないのだろうな、と。
私に摘まれた小さな花は、
分厚い本の中で時間をかけて、
押し花という姿に変わり、
この"はてしない物語"の中を生きてゆくでしょう。
では私は?私たちは?
ほんの一瞬、
ささやかな示唆を与えてくれた野の草花たちが、
次の制作のモチーフになりそうです。
つい自分語りが長くなり、
失礼をいたしました。
どうかどうか、
お元気でお過ごしください。
2020年4月29日
早川 陽子
(写真も早川さんです)
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